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  • 1.メディチ家の繁栄(絵:美しきシモネッタの肖像 by ボッティチェリ)

    季節の花が色とりどりに咲き、明るく華やかなフィレンツェは「花の都」とも呼ばれます。今でも古い建物や大聖堂が昔のままの姿で残され、町全体がひとつの大きな美術館のようです。

    今からおよそ500年ほど昔、この町を治めていたのはメディチ家という一家でした。メディチ家には二人の息子がいました。兄の名前はロレンツォ、弟の名前はジュリアーノ。
    豊かな才能に恵まれ、芸術にも親しむ兄弟をフィレンツェの人々は心から慕っていました。

    そんなジュリアーノの恋人がシモネッタです。
    美しくて心が優しいシモネッタは町中の誰からも愛されていました。
    詩人たちはシモネッタのために詩を作り、画家たちはシモネッタの肖像を描きました。
    シモネッタのことを愛の女神「ヴィーナス」と呼ぶ人もいました。

    写真は「美しきシモネッタの肖像」(1480~1485年頃)。ボッティチェリの作品です。
    ボッティチェリ
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    おはなし名画「ボッティチェリと花の都フィレンツェ」の紹介記事

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    西村 和子

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    2.画家ボッティチェリ(絵:東方三博士の礼拝_部分)

    ところが、シモネッタは若くして治る見込みのない重い病気に罹っていたのです。
    シモネッタの病気を聞いて悲しむ人々の中に一人の画家がいました。彼の名前はボッティチェリ。
    その頃フィレンツェで最も人気の高い画家でした。
    ある日、ボッティチェリは詩人ポリツィアーノの書いた「ヴィーナスの王国」という詩を目にしました。

    ここは ヴィーナスの王国
    ごらん 美の女神が舞っている
    なんて 楽しそうな花の妖精たち

    ここは ヴィーナスの王国
    ごらん いたずら好きの風の髪が
    花の女神を 追いかける
    春の花たちの 目を醒ますように

    ボッティチェリはこの詩をもとにシモネッタの美しさを永遠に残す絵を描こうと絵筆をとりました。

    写真はボッティチェリが描いた「東方三博士の礼拝(部分)」(1476年頃)です。
    画面向かって右端がボッティチェリ、左から三番目の横顔がジュリアーノです。聖書を元にした絵画に自分たちを描くなんて大胆ですね^^。
    ボッティチェリ
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    3.ヴィーナスの王国(絵:春)

    画面向かって右手では大地の精クロリスが楽しそうに遊んでいます。そこに現れたのが西風の神ゼフュロス。
    ゼフュロスに捕まったクロリスは花の女神フローラに変身します。暖かい春の風に包まれて、辺り一面に花が咲く野原を薔薇の花を撒き散らしながら軽やかに歩いていきます。

    画面中央から左手にはヴィーナスに仕える愛と美と恵みの女神たちが手を取り合って春の訪れを喜んでいるかのように踊っています。透き通る衣の美しさに人々はボッティチェリを「線の詩人」と呼びました。

    いたずら好きのキューピットが女神たちを恋の矢で狙っていますが、ヴィーナスに目隠しをされてしまいます。
    左に描かれているのはマーキュリーという名の神様です。花たちのために雨を降らせようとしているところです。
    マーキュリーはジュリアーノの肖像とも言われています。

    画面の真ん中ではこの春の王国を治める愛と美の女神ヴィーナスが皆を静かに見守っています。
    ヴィーナスをはじめ、女神たちにも、大地の精にも、みんなシモネッタへの想いが込められています。

    この絵はポリツィアーノの詩の題名をとって「ヴィーナスの王国」と呼ばれていましたが、後に画面に溢れる春のイメージから「春」(1478年頃)と名付けられ、今でも春の暖かさと喜びを活き活きと私たちに伝えてくれています。
    ボッチチェリ
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    4.もう一人のヴィーナス(絵:ヴィーナスの誕生)

    シモネッタは「春」の完成を待たずに23歳という若さで亡くなってしまいました。
    仲の良かったジュリアーノもシモネッタが亡くなった後、敵の人たちに殺されてしまいました。
    華やかだったフィレンツェも少しずつさびれ、芸術の中心はローマ、ミラノ、ヴェネツィアに移って行きました。

    そんな中、フィレンツェに留まったボッティチェリは「春」にも描き切れなかったシモネッタの思い出をもう一度描きたいと強く思うようになりました。
    この頃、学者たちの間では愛と美の女神ヴィーナスは二人いると考えられていました。一人は天の神ゼウスと大地の女神ディオネから生まれた地上のヴィーナス。ボッティチェリが「春」に描いたヴィーナスです。

    もう一人は海の泡から生まれた天上のヴィーナスです。
    「この天上のヴィーナスこそ僕の描きたかったシモネッタに違いない」
    そう思ったボッティチェリは早速、描き始めました。

    「ヴィーナスの誕生」(1484年頃)では「春」にも描かれていた西風の神ゼフュロスが花の女神フローラを抱きながら海の泡に息を吹きかけています。そして、その泡の中から天上のヴィーナスが現れました。
    ヴィーナスの気高い姿はまるで真珠のように光輝いて見えます。

    ボッティチェリ
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